大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(う)204号 判決

被告人 屋舗欣三

〔抄 録〕

所論は、原判決は、スリツプ跡により被告人が本件横断歩道上を時速約五〇キロメートルで進行したと認定したが、これは単なる推測に基づく事実の認定であつて、その点について適法な証拠調べがなされていないから、訴訟手続に法令の違反があり、破棄を免かれないと主張する。

なるほど、本件起訴状には被告人車の当時の時速を約四〇キロメートルと記載してあり、被告人の司法警察員に対する供述調書中の記載や被告人の原審公判廷における供述によつても、やはり当時の時速は四〇キロメートルくらいであつたということになつている。しかし、司法警察員作成の実況見分調書によると、被告人車は、事故現場に左右それぞれ一九・〇〇メートルおよび一八・九〇メートルのスリツプ痕を残して頭初被告人が急ブレーキに足を向けたという地点(<1>)から約二三メートルあまり前方に停車していたこと、になつているし、また右現場がアスフアルト舗装で当時その路面が乾燥していたことも明らかである。したがつてブレーキが現実に作動するまでの空走時間を二分の一秒としてその間に進行する被告人車の空走距離(時速を五〇キロメートルとすると約七メートル弱)に、右スリツプ痕の長さ一九メートルを加算した制動距離と、他方被告人車が制動によつて滑走中その前部左側が被害者に衝突して同人を左斜め前方約五・四〇メートルの地点にまではねとばした際の衝撃によつて生じる制動効果をも合わせて考慮すると、被告人車の当時の時速が五〇キロメートルくらいであつたと推定することは経験則上可能であると考えられる。したがつて、原判決が、被告人の前記供述を採用せず、スリツプ痕の長さ等によつて経験則上認められる範囲の時速を認定したからといつて、別段訴訟手続に法令の違反があるとはいえない。論旨は理由がない。

(樋口 目黒 伊東)

註 本件破棄は量刑不当

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